PSO2にてまったり活動中。 RPだとかその他いろいろ雑文書きとか。
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白銀 桜

Author:白銀 桜
万華鏡、うつくしいかたちをみるもの。
映るものを、言葉に変えて。

日常、PSO2/PSUでのRP、創作など。

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「……また」
 腕に浮かんだ、何かの回路のようにも見えるフォトンを指でなぞった。いつもなら隠せているはずのそれは、いつになく煌めきを増している。目を細めながら、腕のフォトン痕を見つめる。いつものように集束をイメージしても、弾けるようにその集中が解かれてしまう。今までにはなかったことに、躊躇いと不安が落ちた。
 止まりかける手を動かして、支度を続ける。けれど選ぶ服は、いつもより腕の隠せるものに自然となっていく。それに気付いて、鏡の中の顔が苦笑した。
「時間、ね」
 心配はかけたくないし、かけられない。ただでさえ、あの人は心配性……異常に気付かれれば、任務に出るどころの騒ぎじゃなくなってしまう。
 自分の身に起きているのが、フォトンが過剰に活性化しすぎているための防御反応だということまでは判っている。腕に浮かぶフォトン回路のようなコレが、フォトンサーキットと呼ばれているものの一種であることも。大規模なコールドスリープが行われたあの年の、少し前から現れたコレは、その時からの付き合いだ。初めは余剰フォトンの放出まで伴っていた出現も、自分の意思で抑えることが出来ていたのに……原因は1つしか、考えられなかった。
 ダーカーの巣窟と言われる場所への、強襲から繋がる拉致。独りで遭遇したなら、まず戻ることさえ難しかっただろう。偶然にも、私には誰より頼りになる“盾”が居てくれた。そのおかげで無事に戻っては来れたのだけれど、
「……早く忘れなくちゃね」
 自分の暗がりを覗き込んだような錯覚さえ起こさせた、『クローン』の存在が頭を離れない。虚のような、ただただ黒い眸が目の裏に今でも残っている。深く深く、唇が裂けるように向けられた笑みが今も小さな棘のように刺さり続けている。忘れたいと願えば願うほど、あの姿は真っ黒な影を落とし続けているようだった。
 端末が小さな振動と共に鳴る。……あぁ、待たせちゃったのかもしれない。
「ごめん、今出るわぁ」
 何事もないようにその日は始まって、いつものように笑って終わる、はずだった。
「――っ!」
 止まらない。
「や……止まって……止まってよ……!!」
 腕の模様がひときわ強い光を放つ。身体中の血が泡立つような熱と、痛みとも痺れともつかない痙攣が、しきりに異常を訴える。
もしも“これ”に音があったのならば。ざらざらと、ざわざわと、耳を打って鳴ったのかもしれない。
 冷気を模したようなフォトンが溢れ出す。止める術を持たない、知らないこの身体を確実に蝕みながら、煌めくように溢れていく。傍から見られたのなら、綺麗だと錯覚するほどの光。けれどこれは、終焉の光だった。
 遠くなる意識の向こうで、名前を呼ばれた気が、する。聞き慣れた心地の良い声は今、酷く乱れてひび割れて、一心に案じていることだけが判る。ゆっくりと首を巡らせて、声の方へ顔を向ける。フォトンが流れる光に包まれて、笑う。
「……大丈夫」
 笑わなくちゃ、心配かけないようにしなくちゃ、――途切れそうになる意識を繋いで、指を、腕を伸ばす。震える腕に触れ、震える肩に頬を寄せる。燃えるように凍えるように熱く冷たい額をあずけて、目を閉じる。
「大丈夫、……よ」
 縋る指が震える。何処かでもう、判ってしまっていた。この場所にはもう居られないこと。手離したくないこの場所に、手離すことなど考えられなかった唯一のひとに、最後の嘘を告げていること。
 遠く、私の名前が聞こえる。花を嘯き続けた、私の名前。――あなたには、本当の名前を伝えておくんだったかしら。
「……、」
 その人を呼んだはずの私の声は、もう音にはならなかった。


 うなされ、もがき、跳ね起きたその顔色は青褪めていた。気付かないうちに乱れた息を整えながら、伸びた黒髪をかき上げる。目の裏に灼き付くのは、良く知る女の顔。閉じられた眸が二度と開かないであろうことを予感させる、雪のような肌の白さを思い出して、何度も首を横に振る。
「どうしたのぉ……悪い夢でも見た?」
 驚いたように、案じるように、柔らかな声が尋ねる。こちらを覗き込む、淡く光るボルドーの瞳が、隠しきれない動揺を読み取ったらしい。そっと華奢な手が伸ばされるのを、掴んで引き寄せた。
「……どうしたの?」
「本当に、何ともないのか」
「――ないわよ、大丈夫」
 一瞬の間の後に返る言葉に、思わず表情が揺れる。腕に思う以上の力がこもる。腕の中から返る驚きと戸惑いに、小さく声がこぼれた。
「……ふざけんな」
「え?」
「……何でも、ない」
 そっと伸ばされた指が、乱れた前髪を撫でる。思わず目で追う先には、生地を透かして淡く光る痕があった。
 ――離すものか、と。離れるものか、と。声にしない、ならない思いが、唇をただ震わせる。
「……社?」
 ……この人を、死なせるものか。
 
 end.
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