PSO2にてまったり活動中。 RPだとかその他いろいろ雑文書きとか。
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白銀 桜

Author:白銀 桜
万華鏡、うつくしいかたちをみるもの。
映るものを、言葉に変えて。

日常、PSO2/PSUでのRP、創作など。

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 静かな昼下がり。外で遊んでいるはずの子ども達の声が、ぴたりと止んだ。嫌な予感に速足で外に出ると、声をかける前に子ども達がこちらへ逃げてくるところだった。たくさんの泣き顔に、その子達を庇っていたらしい大きな子の頬には、赤い跡が残っている。震えているその子の頭をそっと撫でると、部屋に戻るように促した。
「……ったく」
 視線を外さずにいたその先には、安っぽいスーツと貴金属で固めた、判りやすい連中が居た。下卑た笑いが、私を認めて一層深くなる。出て来ようとした院長を中に戻るよう促すのに、少しだけ笑んで頷いてみせる。――用心棒でもあったらしい長身が、姿を見せなくなって数か月。元々性質の良くないのが近くに居たらしいこの孤児院は、またターゲットの頭数に入れられてしまったみたいだった。
「よぉ、姉ちゃん、こんなトコで何してんだよ、えぇ?」
「いーい女じゃねーかぁ、用があるならゆっくり聞いてやってもいいんだぜぇ?」
 絵に描いたような下衆な台詞に眉根が寄るのが判る。大概自分も短気だと、内心苦笑しながらもゆっくりと足を運んで、距離を詰めていく。視界の端で、窓際に並んでこちらを見ている子ども達が入るけれど、――1回で、効果的に追い払わないと。
 ゆっくりとした足取りはそのままに、羽織っていたジャケットに手をかける。片腕ずつ、滑らせるように抜いて、指でつまんだジャケットを地面に落とす。薄手のキャミソールとショートデニムだけの無防備な姿に、下品な歓声が上がった。一挙手一投足に艶を乗せ、彩りながら、テンションを変えていく。私が勝手に任された留守だけれど、だからこそ。――何事もなかったように、守らなきゃ。
 伏し目がちに、唇が小さく笑みを刻む。ゆっくりと、2m手前で足を止め、伏せていた目を上げる。……季節外れの雪が身体を抱くように溢れ始め、腕にはフォトンがラインを描くように巡っていく。数か月、外では潜ませていたフォトンが瞬きの間に満ちていく。唖然とする連中に、光る眸を向けて微笑んだ。
「用はないけど、遊んであげるわぁ――少しくらいイタくたって、その方が燃えるでしょぉ?」
 チャージはなし、即時発動。素手のまま放ったイル・ザンは連中の足元を一気に薙ぎ払い、転ばせる。口々に上がる怒声に構わずに、サ・ザンを中心に叩き込む。小規模な竜巻は容易く、大の男たちを次々と巻き上げては地面に叩き付けた。
「あらぁ、もうおしまぁい?……つまらないわぁ」
 引き抜いたコウショウセンを1枚放り、ゾンディールを指先で投げる。強制的にまとめ上げられる悲鳴を前にブーツに履き替え、一息に距離を詰める。
「てめぇ……こんなことして、」
「タダで帰してあげるだなんて、言ってないわよぉ? 高嶺の花に考えなしに手ぇ出すなんて、――馬鹿ねぇ」
 ゾンディールのフィールドの中を、イル・ゾンデで駆け抜ける。情けない声を上げて感電状態になった連中の頭上を渡るようにブーツで“一撫で”して回ると、舞い散った桜色のフォトンの羽根が消える頃には、すっかり静かになっていた。
「――大人気なかったかしらぁ」
 肩を竦めてジャケットを拾い、出した端末で連絡を取り始めると、血相を変えた院長が大慌てで走ってきた。
「大丈夫だったの!?」
「……これでも、アークスよぉ?」
「なんて……なんて無茶を、」
「やりたくてやったコトよぉ?――それより、何か縛り上げるものとかないかしらぁ? 流石に一般人相手でも、あたしじゃ接近戦は無理だしぃ……」
 言っている間に、子ども達がわらわらと駆け出てくる。よく見ると、きっと唇を噛みしめて、手には普段遊んでいるなわとびを繋ぎあわせたものを持っていた。こちらが何か言うまでもなく、子ども達は連中をぐるぐる巻きに縛り上げてしまう。意外な手際の良さに言葉を失うと、さっき頬に赤い跡を付けていた男の子が得意そうに言った。
「社兄ちゃんの手伝い、オレが一番やってたから得意なんだ!」
「……そう、だったのね」
 笑うと、身体の力が抜けて。無理矢理放出してフォトンが一気に収束していく。今更のように小さく震える指をジャケットに通して隠すと、私――あたしは、向こうから駆け寄ってくる見知った顔に手を振った。
 
† 
 
 ……割と序盤でやらかした立ち回りの所為で、あたしの居場所はすっかり出来上がってしまっていた。市街地の警邏に出ていて、あの後駆けつけてくれたアスマが連中の顔を知っていたおかげで、あれ以来性質が悪いのが来ることもなくなっている。
 子ども達の食事や勉強を見ているうちに、もう2年が経とうとしていた。
「今日は寝付き、良かったわぁ……お疲れ様ねぇ、院長」
「お疲れ様ね。――少し、コーヒーでもどう? 淹れるから」
「えぇ、じゃあ少し」
 勧められて待つと、香りのよいカップが差し出される。受け取ると、院長は改まったように口を開いた。
「いつも、ありがとうね。助かってるわ」
「自己満足でやってるだけよぉ?――手はあった方が楽でしょう? 男手じゃないから、大したことは出来ないけどぉ」
「代わりだなんて思ってないわ、あなたはあなたでしょ」
 こちらの言葉に苦笑した院長の顔を見て、少し笑う。
 コールドスリープを拒む代わりに、定期健診と除染処理、更に緊急時の召集まで課せられるとは思わなかったけど……いろいろ凍てつかせたまま待つよりは、きっと随分と楽しいのだと、思う。
「助かってるのも確かだしね、子ども達がいろいろ覚えてくれるようにもなったから」
「出来ることしかしてないわぁ、あの子達が良い子なのよぉ」
 小さく笑うと、帰って来たのは溜息だった。顔を上げると、院長は子ども達を見守っている時と同じ顔で、こちらを見ていた。
「本当にあなたは甘え下手ね。――たまには甘えていいのよ?」
「…………」
 手にしたカップを見つめ、僅かに映る眸が煌めきかけているのに気付く。……あぁ、揺らいだ。
「――コーヒー、ご馳走様」
「えぇ、……また寄っていくの?」
「戻るのも、近いだろうし……メンテナンス程度に、ね」
「そう、気を付けてね。――おやすみなさい、ルルーディア」
「えぇ、おやすみなさい」
 院を出たのは、もう空が暗くなった後だった。歩きながら、小さく溜息をついて、小さく苦笑する。まだ、こんなにも簡単に、こんなにも単純に揺らいでしまうのに……何が、大丈夫だったんだろう。
 少し歩いて部屋に着くと、預かっていたキーで中に入る。静まり返った部屋には、月明かりが射し込んでいた。簡単に掃除を終わらせ、肩の力を抜こうとして、――身体の力が、一気に抜けた。
 床にへたり込むように座り込んで、見慣れた、けれど主の居ない部屋で一人。――ぐるぐると渦巻く声にならない言葉は、一筋の涙になった。
 通信が完全に途絶えてから、どれくらいだろう。
 毎日のにぎやかさに紛らわした不安や心配は、何処に隠れたのだろう。
 薄れていきそうになる面影を留めるためにここに来て、何度くずおれたかは数えていない。
「……っ、は、……ぁ」
 こんな姿、誰にも見せられない。
 こんな顔、誰にも見せたくない。
 萎れた花なんて、目も当てられない。
 だから、今だけ。――甘えることも甘やかされることも許されたこの場所で、また咲き誇るための自分を取り戻す。
 ――月はまだ、沈みそうになかった。
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