FC2ブログ
access
最新記事
カテゴリ
最新コメント
月別アーカイブ
プロフィール

白銀 桜

Author:白銀 桜
万華鏡、うつくしいかたちをみるもの。
映るものを、言葉に変えて。

日常、PSO2/PSUでのRP、創作など。

検索フォーム
リンク
ブロとも申請フォーム
QRコード
QR
スポンサーサイト
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

--.--.--(--) | スポンサー広告 |

【PSO2/RP】銀色猫の笑う夜 1 【spin-out 】
「もーぅ、キースさん今日はぜんぜん桜のお話聞いてくれないのですぅ!」
 甘ったるい鼻にかかる声と同時に、視界を真っ白な谷間が埋める。無意識に堪能しながら目を上げると、この店No.1の嬢・桜が頬をふくらませていた。――つってもこの店、コイツしかいねぇんだが。
「オゥ、聞いてたぜぇ、アレだろアレ、エロい服の話だろぅ?」
「ちーがーうーのーでーすー! 今日は髪の話だったのですよー?」
「お、おぅ」
「せっかくギレスタくん盛りしてもらったのに、今日はキースさん、すっかり上の空なのですぅ。桜、寂しいのですよー?」
 言われて桜の頭の上を見ると、どうやったもんか、上昇している縦ロールの陰からひっそりとこっちを見ているぬいぐるみが見えた。――こえーよ。
「何だその、物陰からひっそりこっち窺ってんのはよー、オメー何か取り憑いてんじゃねーのか、それぇ?」
「もー! ママぁ、聞いてなのですよ、キースさんがひどいのですーっ」
「また、下着見せろとか脱げとかですか?」
 狭いカウンターの奥から、息を飲むほどの美人が顔を出した。
水色のキモノを隙なく着こなした立ち姿は、どこからどう見ても上玉だ。
「おいオメー、俺がいつもそればっかみてーだろうが」
「大体合ってるじゃないですか」
 クス、と笑みを溢して小首を傾げる美人に、桜が体当たりするように抱きつく。――すげぇ勢いで揺れる胸を堪能していると、桜が時計を見て言った。
「じゃ、キースさん、ごゆっくりなのですよ? 桜はこれから出稼ぎなのですー」
「んぁ? 何だオメー、もう上がんのかよ? もっと見せろよサービス足んねぇぞ、サービス!」
「はい、キースさん、サービス」
 どんっ、と。鏡月のボトルが揺れる勢いで、目の前に小鉢が置かれる。恐る恐る中を見ると……いつもの、だった。
「オメーよぉ、ミシェル! 俺がナスの漬物嫌いなの知ってんだろーがよ、毎度毎度心臓に悪い置き方しやがって!」
「えぇ、知ってますよ? でも、置き方も含めてこれ、メギドですから」
「なのですーv」
「……食えやいーんだろうがよ、食えや……」
 俺が通うこのボロっちいスナック・銀猫は、カウンター席が3席に申し訳程度のテーブル席が1つしかない、絵に描いたような場末感に溢れかえった店だ。常連と呼べるようなのは俺を含めた物好きな数人しかいないから、暇を持て余した桜が昼夜問わずに営業の通信をつっこんでくるわけだ。――まぁ、悪い気がしねーのが一番性質が悪いんだろうがな。
「じゃあ、ママ、行ってくるのですーv」
「えぇ、気をつけてくださいね? あの子が送ってくれるんでしょう?」
「はいなのです、弟が裏で待っててくれてるのです」
「それなら安心ですね。今日もとても可愛らしいですから、良いお客さんに会えますよ。行ってらっしゃい、桜ちゃん」
 桜が俺に向かって投げキスしながら銀猫を出て行くと、小さな店の中は途端に静まり返った。
 美人が水割りを作る音だけが響き、しばらくして静かにグラスが俺の前に置かれた。
「――どうしたんですか、キースさん」
「どーしたって、どーも」
「しない人が、そんなに上の空なんですか? うちの可愛い子をロクに見てないとか、キースさんにしては有り得ませんよね?……桜ちゃんも行ったんですから、そろそろ話せますよね」
 カウンターの中でスツールに浅く座り、美人は静かに微笑んだ。相変わらず食えねぇヤツだな、コイツは……。
俺は尻のポケットから、よれた写真を取り出した。そこに写るヤツに一瞬目を奪われそうになりながら、美人の前に叩きつけるように置く。美人は軽く眉をひそめながら、写真を取り上げた。
「……これは、セラスちゃんじゃないでしょう? 見つけたのかと思いましたよ」
「ちげーよ。まだアイツはアークスにはいねぇ、そいつは別のガキだ」
「……キースさん、」
「似てんだろ、アイツによ。――ムカつくぜ、世界がキレイだとか抜かしやがった、あのアークスにいてだぜ! クソみてーなこの場所がキレイだとよ!」
 言えば言うだけ、あのガキの言葉が耳に戻ってこようとする。振り払うように水割りを一気に呷ると、グラスを掴む手が細かく震えていた。
「……まるで、ラニーちゃんですね」
「テメェ、ミシュ!」
 美人の襟に手を伸ばそうとして、思いがけない力で跳ね除けられる。睨み付けるように目を合わせると、さっきまでの美人は形だけになっていやがった。
「困った人ですね……僕にまで当たらないでくださいよ、本当に手が早いんですから。現役復帰した人に手加減できるほど、僕、器用じゃないですよ?」
 落ち着いた声のトーンは変わらないが、中身が入れ替わったように違うのが、俺に伝わってくる。
 美人ママ、ってのが形だけだってことは、よーく知っている。何せコイツは、
「うっせーよ、俺の相棒張ってた野郎がそうそう簡単に腕落とすわきゃねーだろうがよ。オイミシュ、テメェどういうつもりだ? こんなガキとラニーが似てるだと?」
 俺と同じ、第2世代のアークスだった男だ。銀猫のママ・ミシェルことミシュは、肩を竦めると呟く。
「いちいち僕が言うまでもないですよね?――キースさんが苛立ってるの、その所為じゃないですか」
「っせぇ、この!」
「まったく……話に来たんですか、それとも喧嘩しに来たんですか? 嫌ですよ、僕。このキモノ、彼女に買っていただいた結構良いものなんですから」
「テメェ……だー……クソ、俺の間合い判り過ぎだテメェ……」
 怒りの矛先を逸らされて崩れる俺にくすくすと笑いながら、ミシュはもう1杯水割りを俺の前に置く。そして写真を改めて眺めながら言った。
「で……どうしたいんですか、この子?」
「辞めさせてやる」
「……単細胞にも程がありますよ、キースさん。それってキースさんの、」
「うっせーんだよ! アイツにそっくりなガキが、あいつと同じこと言って笑いやがる……オメー、俺が黙ってられると思うのか?」
「――思いませんけど、でも」
「でももクソもねぇ!――ダメだ、ダメなんだ。ダメなんだよ、ミシュ。……取り返しのつかねーコトになっちまったらよ」
「…………」
 ――1体1体掻っ捌いた腹に腕を突っ込みながら、探し歩いた暗闇。
 夢にならない感触に魘されながら、ただ殺して殺して、殺して回るしかなかった毎日。
 ――アレをまた繰り返すだと?
 聞くまでもねぇ、――答えは、否、だ。
「オイ、ミシュ」
「何ですか、キースさん」
「オメー、金貸せ」
「……は?」
「200で良いぜ。貸せ」
「……本当に仕方ない人ですよね、キースさん……」
 大袈裟に溜息をついてみせながら、ミシュはカウンターの下に無造作に手を突っ込む。
 その手がカウンターの上に戻った時、そこには帯封も綺麗なままの札束が2つ転がっていた。
「利子は昔のよしみとやらで目をつぶります。どうせ戻ってこないでしょうし、いつでも良いですよ」
「オゥオゥ、何とでも言えよ」
「……仕方ない人ですよね、キースさんって」
 小さく呟くミシュの手から、写真を取り返す。
 黒髪の、どこか暗い目をしたガキ――セリスィ。コイツだけは、どーにかして辞めさせてやる。
 絶対に、だ。
 無造作に札束を懐に突っ込むと、俺は席を立つ。ミシュはもう一度溜息をつくと俺を見た。
「……痛い目、見れると良いですね」
「俺じゃねーよ、コイツがだよ」
「…………」
「じゃーな、ミシュ。桜にまた来るって言っとけや」
「えぇ、判りましたよ」
 肩を竦めるミシュを背に、俺は銀猫を出る。
 ……あぁ、そうさ。
 このクソみたいな世界で、1つぐらい俺が好き勝手にしても良いだろうが、
「……なぁ、ラニー?」
 俺はそのまま、いつものたまり場……バーへと足を向けた。


【to be continued】
スポンサーサイト

2013.04.16(Tue) | 『銀色猫の笑う夜』 | cm(0) |

この記事へのコメント
Name
E-Mail
URL
Title

password
管理者にだけ表示を許可
/
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。