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白銀 桜

Author:白銀 桜
万華鏡、うつくしいかたちをみるもの。
映るものを、言葉に変えて。

日常、PSO2/PSUでのRP、創作など。

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【PSU/RP】味覚【存在証明。】
「どーお、ペロちゃん? 美味しいー?」
「??甘い」
 両手で抱えた菓子パンの、白いふわふわしたクリームを口いっぱいに頬張って、味覚の情報を伝えると、相手??なよ、とポーズを決めたキャスト・アインが嬉しそうに答えた。
「いーわよねぇ、あたしには食事の機能ないしねー」
「俺も初めてだよ」
 ……ふと、ある生身の顔が浮かんだ。結局あいつとは、この機能を試す前に別れたんだな。

『人間と同じように生活できる機能は一通り搭載してるからね、少しずつ試していこう』
「????」
「あらやだ、どーしたの? 悪くなってた?」
「……何でもない」
「悪くって……どうかしたのか?」
「アリスちゃんが賞味期限切れ寸前のを冷凍してたからってくれたのよぉ、あたし食べられないから、ペロちゃんにプレゼントしたのv」
 アインの言葉に、ここにきて知り合った“親父さん”が微妙な顔で俺の手元を見ている。……よく考えてみると、俺に対して何だか小動物でも眺めるような目をされているような気がするんだが。
「……ま、まぁキャストだし、大丈夫か……」
「大丈夫よぉv」
 ……他人のことをとやかく言えるわけじゃないが、こいつも大概面白いよなぁ……。ごっつい体格で乙女のようなポーズを決めるアインを見ながら、何故か記憶は遡っていた。



 “生まれて”3日目の朝だった。焦ったようにラボに現れたあいつは、いきなり俺の前に膝をついた。
「……どうしたんだよ」
「すまない、エスペロス??逃げてくれ!」
「この数日でお前がいろいろ残念な方向のみに飛んでるのは判ってきたが、今日は朝からか」
「毒舌萌えしたいところじゃあるんだけど、今回はマジだよ」
「マジ?」
 改めてあいつの顔を見る。……異常な発汗、心拍数・脈拍も上昇。握りしめるように差し出す書類が、小刻みに震えていた。
「……どういうことだよ」
「……実は僕は、個人融資を受けてこのKKLプロジェクトの研究をしてる研究員でね。一応、雇い主が居るんだ。君が完成したら、一番に報告することになってたんだ。……何処にも登録しないまま、ね」
「つまり、俺は“物”なんだな?」
「君を聡く造って良かった、天然キャラもかなり捨てがたくて3日ぐらい寝ないで悩んだんだけど、今ボケられたら流石に切なくな」
「るのは自由だが、とりあえず事情を全部説明しろ」
 説明の間、この3日であいつは一番まともな顔をしていた。
 次々と渡される俺のボディに関するデータ、ガーディアンズへの紹介状、戦闘プログラムの緊急インストール、当座の荷物と称した大量のパーツ、そして最後に手渡されたのは、コロニー在住を証明する1枚のカードだった。
「……これで全部だよ」
「…………」
「これが、僕に出来る全部だ」
 そう言って笑うあいつの顔は、何処か……そう、悲しそうに、見えた。



「どーよ、初めての食事は?」
「……わふふはひ」
「もー、目いっぱい詰め込んでしゃべってぇ……やだ、口の回りクリームだらけじゃないのよぉ! ほら、こっち向きなさいよっ」
 アインが何処からともなくレースのハンカチを取り出して、俺の口元を拭う。“親父さん”がそれを見て何故か感心したように呟く。
「お母さんみたいになってるぞ……」
「やぁん、お嫁さんだなんてぇv」
「言ってないんだがなぁ!?」
「あ゛ぁっ?」
「素が出てんぞ、アイン」
「あらっ、やっだぁーv」
 アインの声を聞きながら、手にした菓子パンをふと眺める。
 ??もしも、時間がもう少しあれば、俺の感じているこの味覚も共有できたんだろうか。
 俺という“人形”でも、少しは……何かを、感じられたんだろうか。
 初めての食事は、『甘い』、と。
 俺の記憶野に刻み込まれた。

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2011.12.29(Thu) | 『存在証明。』 | cm(0) |

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