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白銀 桜

Author:白銀 桜
万華鏡、うつくしいかたちをみるもの。
映るものを、言葉に変えて。

日常、PSO2/PSUでのRP、創作など。

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ストーリーテラーに100の台詞…No.1 「できたっ!」
 ……さっきから、激しく不穏な物音が断続的に鳴り響いている。
 金属と金属が噛みあう音、陶器がぶつかり合う音、そしてその合間を縫うように聞こえてくる意味不明瞭な言語。俺の耳にその言葉は、最早呪詛のそれとしか聞こえていない。……何で逃げなかったんだろうか。今からでも遅くないぞ、そんな言葉が脳裏をよぎる。今そこのドアを開けて脱兎の勢いで死ぬ気で走れば、この恐怖からは逃れられると、慈悲深い天使が囁いている。
 けれど、その囁きはいきなりあがった声に粉砕された。
「できたっ!」


 言うなり、俺の目の前には大きな皿が置かれた。恐る恐る、俺は皿とその声の主との間に視線を往復させる。何を……どうやったら……こんな状態になるんだろうか。皿の上には不定形のゲル状の物体が湯気を上げている。色は既に、何色と限定するのも難しい。微妙にくすんだ色合いの赤やら緑やら白やらが混ざり合って、実に……実に、直視したくないと視神経が訴えかける外見になっている。匂いは既に嗅覚が認識することを恐れて機能していないので割愛させていただこう。
 そして、皿を持ってきた声の主は俺の顔に挑戦的な視線を遠慮なく浴びせかけながら、元は愛らしいピンクの花柄フリルだったエプロン??現時点ではそのピンクはどうやったものか色褪せ、あちこちに焼け焦げらしきものとゲル状の物体がスプラッタに配置されているという非常に斬新なデザインになっている??をつけたまま、仁王立ちになっていた。
「??1つ、訊く。これは何だ」
「あんたが言った通り、トマトとバジルのパスタじゃないか」
「…………」
 俺はやっと、椅子から立ち上がった。膝が一瞬笑いそうになったが、そんなことに構っている暇はない。今の俺を支えているのは恐怖ではなく、怒りだった。
「何の冗談だ? 俺は料理人の弟子を紹介されたんであって、食材でスライム作るような輩を紹介してくれなんぞ一言たりとも言ってないぞ!」
「すっ……スライムぅ!?」
「これの何処がパスタだ!? パスタに謝れ、泣いて謝れ、即刻土下座だ!」
「たっ……食べてもないのに偉そうなこと言うな!」
「じゃあお前が食ってみろ」
「ぅぐ……」
 やっと、俺の目の前の小娘が口を閉ざした。??恩師の娘ということで大目に見てやろうと覚悟を決めていたが、これじゃお話にならない。俺は溜息をつくと小娘を座らせた。
「お前、何だって料理人になりたいんだ? この有様じゃまともに料理なんぞしてないだろうが。どういう気の迷いだ、言ってみろ」
「??母さんが死んで、父さんがご飯を食べないんだ」
 ……いきなり、重い話だった。小娘の母が病に倒れ、早々と逝ってしまって数ヶ月。小娘の父はろくに食事も取れない状態で、このままだと衰弱死しかねないという状態、なのだそうだ。その父のために料理をしようと思ったはいいが、生憎料理の“り”の字すら知らないということで俺のところで1から修業をしようと思ったらしい……が。
「それならもっと手近で済ませりゃいいだろうが」
「父さんはやたら舌が肥えてるから美味しくなきゃ駄目なんだ」
「??はぁ……」
 何て面倒なことになっちまったんだろう。小娘の目は真剣そのものだった。俺は頭をがりがりと掻くと、小娘の頭に手を置いた。
「修業もへったくれもない、何はともあれ片付けだ」
「でも」
「あんな状態の厨房で何が出来る!?」
 厨房は既に泣きたいほどの状態だった。物はいたるところに散乱し、空き巣にでも入られたような凄まじさだ。おまけに、天井にまで焼け焦げができるような火力、うちの道具にあったか……? 俺が深々と溜息をつくと、小娘は頬をはちきれんほどに膨らませながら、黙々と焦げた鍋をこすり始める。
「とりあえず、片付けが終わったら呼んでくれ。俺は向こうで仕込みやってるから」
「あ……あたしも、」
「モノには順序があるだろうが? あ?」
「??はい」
 面倒なことになったもんだ。

「できたっ!」
「何ができただ、拳大のジャガイモが親指大になる奴があるかっ! お前皮むき止めろ、食材が足りなくなる!」
 本当にこいつに、料理を教えるなんて離れ業が出来るんだろうか?

<No.1 End>

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2005.01.31(Mon) | ストーリーテラーに100の台詞 | cm(0) |

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