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白銀 桜

Author:白銀 桜
万華鏡、うつくしいかたちをみるもの。
映るものを、言葉に変えて。

日常、PSO2/PSUでのRP、創作など。

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【PSU/RP-Episode】選んだ記憶【Miladya/『その、記憶。』】
「……これじゃない。彼女は人だ。モノなんかじゃない。契約が何だかしらないけれど……俺は、そう思わない」
娘が庇う者がいたことが、まず驚きであったというに。娘越しに吾を見据えようとするその大胆不敵な愚かさに、笑いを禁じえない。興が乗って、名を訊ねた。
??そして。代わりに吾が名を、訊ねられた。幾久しい間、絶えてなかったことをされた。思い出しても、笑いがこみ上げる。
「……タダじゃ、名乗らないぜ? 人の名前を聞く前には、まず」
その者の眸がふと、紅いことに気が付く。娘の眸もまた、同じ色に染まっていたことを思い出し、口にしかけた言葉を押し留めた。??少し、遊ぼうではないか。

「……自分から名乗れ、って言うぜ?」
『……そう来るか』
こういう無謀さは、嫌いではない。かつての娘を思い出させるようで、むしろ好ましくすらある、が。??娘が隠したことが、気に入らない。これまでの時を同じくしてきた吾に、よりにもよって、隠すことを選ぶとは。今まで幾つもの選択を、この娘にはさせてきた。その中でもこれは……類がないほどに、気分が悪い。
「……あぁ、悪いが。タダじゃ転ばないタチなんでね」
『そうか、ならば……フェイ、とでも名乗っておくか』
「……フェイね。以後宜しく」
……これが娘の名の1つであることが判るのは、時間の問題であろうが。契約のことを知り、吾の存在に気付いたというならば、そう易々と教えてやることもあるまい。
『宜しく出来るかは……知らぬがな?』
??少々、遊びたくなったのだ。



……記憶が、ない。
出かけてから、部屋に帰ってきて……その後の記憶が、完全に欠落している。今までにこんなコトがあったかと、自分に問いかけて??答えがもう、大して残ってないことに気付かされる。
「……そう、か」
鏡の前で呟く声が震えている。それを意識しないように、“あの時”を出来る限り鮮明に思い出そうとする??何を条件に、身の程も考えない契約を結んだのか。
そう、契約は今も確かに結ばれている……この身体の内に未だに“それ”がいることで、こうして今でも生き延びているのだから。
??惑うは、未熟の証拠ぞ?
耳元で、嗤う声が響いた。その声にかっとなる。振り返って、機嫌良さげに鼻歌交じりのマシナリーに向かって手を差し出した。
「ナイフ。早く頂戴」
『何する気ですかーーー!?』
「いいから早く!」
『のの字書いて割腹とか頚動脈ばっさりとか血糊べったりキャーーー!なスプラッタは嫌ですーーーー!』
「自殺するにゃ未練が大きすぎるわよ」
『そーですよー、こんな可愛いマシナリーを置いて逝くなんて出来ないですよねー』
「アンタじゃないって」
『ですよねー!』
……だから何で毎回掛け合いなのかと。溜息をついて、自分のトランサーから愛用のダガーを取り出した。ぎょっとした顔でマシナリーがこちらを見る。
『早まっちゃダメですー!』
「……何想像してるのよ」
『世を儚んだのかとー』
「儚んだ人間がアンタと元気いっぱい掛け合いをするかっ!??違うわよ、ちょっとした宣戦布告」
『へ?』
言って、高く結い上げられていた髪の根本に、迷うことなくダガーの刃先を差し込んだ。
『えーーーーーーー!?』
ばらばら、と髪が落ちてくる。手には、だらりとたれる髪の束があった。
『な……何してるんですかーーーー!?』
「見ての通りよ?」
『え……えーーーーー!?』
マシナリーが絶句して、こちらの手元を指差している。ここまで思い切った切り方をするつもりはなかった、んだけど……切っちゃったもんは仕方がない。不自然なほどに軽くなった頭を振ると、笑って見せる。
「ちょっとエステ行ってくるわ。留守番よろしくね?」



??小さく震える肩が、目深に被ったマントからも窺えた。こんなにも必死に盾になろうとするその子どものいたいけさに、言葉を失いそうになる。小さく、誰にも判らないように首を横に振った。
記憶は知識に。知識は言葉に。言葉は力に。……これすら失ったら、もう、何も出来なくなってしまう。今まで生き延びてきたことでさえ、何の価値もなくなってしまう。
「……もう、いいのよ」
小さく囁くと、その子どもは勢いよく振り返った。涙が今にも零れ落ちそうなほどに大きく見開かれた眸に、また言葉を失いそうになるほどの動揺が走る。??どうして、と。訊ねたい衝動が心をかき乱す。
「わるいことをしていないのに、どうしてあきらめちゃうの?」
震える声が、訊ねる。何て純粋なのだろう、と。涸れたはずの涙が溢れそうになる。……弱るな。弱れば、つけ込まれる。??そう、“アレ”に、
『??惑うは、未熟の証拠ぞ?』
脳裏に声が響いた。びくり、と不自然に肩が震えた。それを周囲が、見逃すはずもなかった。
「捕らえろ!」
肌を外に出さないよう、すっぽりと被っていたマントが剥ぎ落とされる。手袋をした手を挙げるのが、一瞬遅れたのが全ての原因だった。
「だめだよ!」
マントを取り返そうと、子どもが兵士の下に駆け寄る。その身体を事も無げに蹴り飛ばした兵士は、こちらの顔を見るなり絶句した。
「……涸れぬ命というのはこのことか!」
兵士の言葉に構わず、蹴られた子どもを抱き上げる。痛そうに顔を歪めていたその子どもは、それでも目を見て微笑んでみせる。……胸が、抉られたように、痛んだ。
「ごめんね、まじょさま……まじょさま、わるいことなんにもしてないのに。おかお、かくしてるのに。マントとっちゃうなんて、ひどいよね」
……護らなきゃ。この子は絶対、護らなきゃ。
眸を上げると、詰め寄ろうとしていた兵士の足が止まった。伝聞というのはありがたいものだと、内心で苦笑する。
どうやら、歳を重ねない『創国の魔女』だの『常緑の魔女』だのという何処から出たのかすら判らない胡散臭い噂は、この程度の効果を発揮する程度にはまだ浸透していたらしい。
「……寄るんじゃないわよ」
子どもを抱いて、立ち上がる。兵士たちは後ずさる。ゆっくりと歩み出る足に合わせて、道が出来た。
「罪のない子どもを巻き込むんじゃないわ……タダじゃおかないわよ???さ、もういいから。帰りなさい」
「まじょさま……」
「大丈夫よ。??お家の人が心配するわ。だから、」
『争わぬことを選ぶ気か???汝の周りは今、敵ばかりぞ』
脳裏でまた、声が嘲笑う。肩がまた、不自然に震える。腕の中の子どもが、こちらを見上げた。無理に笑んで見せると、子どもはこちらの額へ小さな手を当てて、言う。
「まじょさまもいっしょにかえろ……?」
心臓が、大きな音を立てて跳ねた。脳裏の嘲笑が大きくなる。
『子どもとは何と残酷か……! 帰る場所など最早何処にも残されておらぬ汝に、帰ろう、などとは!』
「……る、さい……っ!」
脚から力が抜ける。子どもを落とさないようにするのが精一杯だった。膝を着いて、心臓の辺りをわし掴む。唐突なことに、周囲がざわめいたのが遠く聞こえた。功を逸ったのか、兵士の1人がこちらに駆け寄ろうとするのを、感じた。
「まじょさまを、いじめないで!」
言葉を紡ごうとした前で、子どもが立ちはだかる。小さな身体で、小さな腕を必死に広げて、うずくまるこの身を護ろうと。??もう、いいのに。
終われるのならば。このまま、この子を護って終われるのならば、何の悔いも、ないのに。
子どもの肩に、痛みを堪えて手を伸ばす……もういいのだと、告げるために。この子を護る、ために。
その時、その薄い胸の中心を、鈍色の何かが貫いた。
「……え、」
??目の前に、深紅の幕が下りてくる。のけぞるように、胸の中に崩れこんできた子どもの身体を受け止める。それはあまりに軽くて、……小さかった。
「ま、じょ、さま……いたく、ない……?」
途切れ途切れに労わろうとする声が、幕をさらに深く下ろしてゆく。

『……では汝、何を望む?』
「??力を。注がれる破壊に対抗するための、それを」
『汝には既に、吾が助力の契約を与えたであろう?』
「足りない……助力じゃ足りない、だから??」
『……ならば、よかろう。汝の記憶は吾が知識。吾が知識は汝が記憶。契約は為された。吾が名を永劫と変えて汝に刻み、その魂預かろう』

「??力を寄越しなさい!! 契約を為したんでしょう、早く!!」
悲鳴で力を喚起する。子どもの、早くも冷たくなり始めた身体を抱きしめて、慟哭のように力を乞い、願う。??思うつぼだと、自分の何処かで声がした。
『選んだな! 己で、己が声で、己が心で、破滅を選んだな!?』
嘲笑が脳裏を埋めていく。
選ぶまいと。
仮令、この身が消え逝こうとも。この朽ち果てぬ身を護るべく、かつての友が、王がそう願ったとしても。
破滅だけは選ぶまいと。
??あんなに、願ったはずが。
深紅はさらに深く、色づいてゆく。
「ぁ……ぅ、あ……」
深く深く、底を知らぬ漆黒へ、色を変えてゆく。
「……あああああああああああああああああああ!」
声と共に。
枷は、外された。



「……気味悪くないの?」
「……どうして?」
「きっと君は……あたしの中にいるモノに、会ったんでしょ?」
「……ま、まぁ……」
言いよどむ彼を見ながら、苦笑してしまう。……予想はしている。おかしな記憶の欠落。今までにはなかった、この状況。
この身体を、使われている。今まで絶対に許さなかったことを、勝手にしでかしているのなら。
??売られた喧嘩は、買うわよ。
「……口止めされた?」
「えー……の、のーこめんとで」
……目が泳いでるし。思わず笑いそうになりながら、彼の優しさを思う。こんな存在を気にかけてくれるだけで、希少価値だというのに。
Wセイバーを振り回しながら進む背中に、また彼の声がかけられた。
「……毎度思うけどさ、無理しすぎてね?」
「そぉ?」
「自分粗末にしてないか。自棄が入ってる気がしたかな、らしくないっつーか……」
……図星、とは言えない。壊れてしまえばいいと願ったことだって、1度や2度じゃない。見抜かれてしまうのは、未熟の証拠ってことだろうか。
『??また、選ぶか?』
脳裏に声がした気がして、手が滑りそうになる。動揺を押し隠して、言葉を紡ぐ。
「……止める方法、絶賛模索中って感じだからかな?」
声はまだ、震えない。記憶は知識に。知識は言葉に。言葉は力に。唯一、今の状態で出来るのは……アレの願うことを、選ばないこと、だ。
『??出来るといいがな?』
脳裏でまた、嗤いが響いた。



??瓦礫の中に立ち尽くす。
あの時の、噎せるような血の臭いも、目の前が暗くなるような澱んだ色も、ないけれど。低く、高くその場を満たす、呻きも悲鳴もないけれど。
“あたし”には、それが見える。聞こえる。
いつまでも消えないその光景は、心ばかりか全ての感覚に灼きついてしまったままだ。
これは、アレが忘れることを許さない記憶。そして、忘れることを選べなかった、記憶。
“あたし”は、何処にいるんだろう。
何もない。ここには、何もない。
??静寂は、耳に痛いと初めて知る。
茫然と足を進める先には、静かに波が寄せる砂浜があった。


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2008.07.19(Sat) | 『その、記憶。』 | cm(0) |

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