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白銀 桜

Author:白銀 桜
万華鏡、うつくしいかたちをみるもの。
映るものを、言葉に変えて。

日常、PSO2/PSUでのRP、創作など。

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【PSU/RP-Episode】褪せぬ記憶【Miladya/『その、記憶。』】
??夢を視ている。
薄暗い地下室の床いっぱいに描かれた、召喚の呪文。急いで書き殴ったそれは、気持ちの乱れがありのままに現れていた。
間に合わないかもしれない。
……焦る手が、スペルを刻み損ねて震える。
間違っているかもしれない。
……震えが、焦りだけじゃないことに気付いている。
けれど、全てのスペルを刻み終えた時。
心はもう、決まっていた。
「われ請い願うは荒ぶる御霊、古の理統べる力……」
声はもう、震えなかった。
自分の中の残った力が、まるで血が流れ出すかのように、床一面のスペルへと落ちていく。目の前が暗くなりそうになる……そこで初めて、残っていた力のあまりの少なさに気付く。気付いてようやく、身体の内側から寒気を感じた。
床のスペルが、不意に光り始める。私を中心にして、光が渦を描くように広がっていく。ふらつく足を何とか留め、まっすぐに光の行方を見つめる。光は次第に集まり、やがてひとつの形をとり始める。
……さぁ、これからが『本番』だ。


人で賑わう青空の下。街道沿いのそこは、いつもなら旅往く人が通りがかるだけの場所だ。商工会が定期的に行っている通称『屋台街』は、会場になった街に参加者が簡易屋台を引っ張り出して店を広げる。そして今日は、『私』もその中の1人だった。乗っていたオスタード??騎乗用に飼いならされた2足歩行のトカゲ、のような生物??から降りて、周りを見る。あんまり混みあってもいないし、ここなら問題ないだろう。
“弟”に作らせた小さなテーブルとスツールを、荷物を積んだラマから下ろす。テーブルの上に、端切れを積み重ねたものと裁縫道具を置いて、準備は完了。オスタードと荷ラマに林檎をあげて、待っておくよう声をかけておく。??さぁ、始めるか。
「んー、と……旅のお供に、新しい服はいかがですか?? お好みの色、お好みのイメージでお仕立ていたします、お気軽にお声かけ下さいませ?」
考えておいた口上を、賑わいだした人の波に向けて口にする。
何処で怪物や野生の動物に遭遇するか判らないこの世界では、如何に生産者である『私』でも、身を守るための防具が欠かせない。けれど、無骨な鎧をそのまま外に見せているのも面白くないと始めたのが、この稼業だったりもする。需要は低いものの、好きな人は足を止めてくれるだろう……その時、目の前に影が差した。
「お針子さん?」
「こんにちは、いらっしゃいませ。流しのお針子ですよ?」
「ふむ……1着仕立ててもらおうかな?」
……お客さんだ! 慌てて手元の道具を確認する。よし、何でも作れる……頑張らなくちゃね。
「どういったものをお仕立てしましょう? お好みの色や、イメージなんかもありましたらお願いしますね。銘が入りますけれど、構いません?」
「構わないよ。じゃあ……血のような深紅でフォーマルな感じを」
「……は、はい、かしこまりました?」
このくらいで驚いてたら流しでお針子なんてやってられない……。頭の中に浮かんだイメージのまま、生地を裁ち、縫い合わせていく。荷ラマに持たせていた染め桶を出して、色を調節すると、生地をさっと漬ける。
「血のような赤……うーん、こんな感じかな……」
「……ふむぅ?」
この世界の凄いのは、どういうからくりが働いているのかは謎だけれど、染めた布がものすごいスピードで乾いてくれたりするところにあるんじゃないかとたまに思う。染め上げたドレスをお客さんの前に広げ、合わせて作ったサンダルも引っ張り出す。
「こんな感じで仕立ててみましたが……お色など、何か気になる点があったら仰ってくださいね」
「へぇ、もう仕上がったんだ? 試着もあり?」
「勿論ですよ?」
手早く作ったものを袋に詰めてお客さんに手渡すと、サービスついでに、隠身の呪文を唱える。それをお客さんに向けて解き放った。数分のち、呪文の効果が切れて姿を現したお客さんは、仕立てたばかりのドレスを着て頷いていた。
「ふむ、いいね。お代は?」
「お気持ちで結構です、けれど……こう言うと困ってしまわれるんですよね、それじゃあ500ぐらいで如何でしょう?」
「ん、貰うね」
笑顔になったお客さんから金貨を受け取り、改めて頭を下げる。
「どうぞ良い旅を!」
見送る私に、また別の人の声がかけられた。
「すみません、いいですか?」
「はい、こんにちは! 何をお仕立ていたしましょう?」
……何だか今日は、忙しくなりそうだ。


「う゛ーーーーーあーーーーーー」
『二日酔いですかぁ?』
「飲んでないのにどーやって酒を残せというか、この道化PMっ」
『またまたそんなっ、ご冗談をー。見てない間に飲まれてたんじゃないんですかー? こう、無意識的っていうんですかー?』
「……それは何てアル中?」
『アル中な主人を持つだなんて、何て不幸なマシナリー生なんでしょーかっ』
「何なのよ、その語呂の悪い言葉?」
『人でしたら人生ですからー』
「あぁ、それでマシナリーs……言うかっ!」
『なんとー!?』
起き抜けで何故にこんな掛け合いをしなきゃいけないのかと……頭を押さえながら起き上がる。そのついでに、目覚まし代理とばかりに喚きたてるマシナリーの口の中に、トランサーに入れっぱなしだったペロリーメイトを放り込んだ。
『モギモギ……も少し高級なご飯の方がー。何かこれ古いですよー、いつのなんですかー』
「やかましいっ」
『エー』
「食べといて文句言うか、アンタは……あーもう。シャワー浴びてくるわ、何か適当な仕事がないか見ておいてて頂戴」
『はいなぁ……モギモギモギ』
文句と食べるので、もぐもぐと口を動かしながら、マシナリーがビジフォンの方に向き直る。それを確認して、シャワールームに向かった。最近どうも、サボることを覚えたらしいうちのマシナリーは、時々監視が必要なのが困りものだ。
15分後、戻ってみると、ベッドの上に1枚のプリントアウトされた用紙が置いてあった。マシナリーはというと、勝手にスリープモードに切り替えたらしく、すやすやと寝息を立てている。……何でそういうとこだけこだわるかね、このマシナリーは。
夢の残滓は、何とか振り払えたらしい。髪を拭きながら用紙を取り上げると、何処か毒々しい色合いの文字が目に飛び込んできた。
「まぐぅ……?」
よくよく内容を読んでみると、特別なVRミッションが本部で組まれているらしい。頑張って受けに行けば本部評価もイイだとか、様々な金品も用意されているとか何とかいろいろな美辞麗句が所狭しと踊っている。……ふみゅ。
年末に向けて、どうにも懐具合も寂しいし……ここは1つ、行ってみるべきなのかしらね。ライセンスも更新出来るならしておきたいし、本部にイイ顔しておくのもたまにはいいだろうし。そうと決まれば、この間言われた『ネタ』を実行させてみるのも面白いかもしれない。
「確か……ツインハンドがこの辺に……あったあった」
昔馴染と話してた馬鹿話。??斧担いで云々を実行するなら、多少の無理には目をつぶらないといけない、わけで。慣れないものを振り回さなきゃいけないのは苦痛だけれど……仕方がない。
本部のカウンターに寄って、レンジャーのライセンスを取得。手早く手持ちの得物を、ツインハンドガンに替えていく。……そういえば初めて使うけど、これ……大丈夫かしら?
「ま、何とでもなるかしらね……」
VRプログラムが起動する。微かな振動が消えた後、懐かしいとさえ思えるような森が目の前に広がっていた。
ツインハンドガンを手にして、踏み出す。見慣れたのやら、何だか懐かしいのやら、原生生物が嫌というほどに湧いてくる。両手の銃を操りながら、バックステップで距離を測る。??うわダメだ、まだるっこい……!
「あー、えっと……聞こえますか?」
唐突に、端末から通信が入る。思わず、足が止まりそうになる。聞いたことのないその声は、遠慮がちなトーンで続ける。
「お手伝いにはせ参じました」
「っとと……ありがたいわぁ」
紙一重で、ブーマの爪をかいくぐる。あぁもう、ソードが恋しい……っ!
あっという間に撃ち尽くした両手の銃をトランサーに放り込んで、次の銃を取り出す。その間に、端末に表示された人物はこちらに向かって歩いてきているようだった。
「……といっても僕テクターじゃないので、傍で見守る以外できませんけど。ね」
「……あら、それが一番心強いわよ?」
何とか言葉を返しながら、また爪をかいくぐる。本当にダメージ稼げないわね、これ……っ!
??それから数分間は、正直今でも思い出すと切なくなる。ようやく一息つけるようになって、一部始終を文字通り見守っていた人物に振り返った。
「……はじめまして、かしらね」
「そうですねぇ……」
「ミレディアよ、ディアって呼んで頂戴」
こちらの苦戦に呆れていたらしき人物の??真正面から見た、凛とした目の印象が、今でも残っている。


「……え、」
愛用のピトックを手に、立ち竦んでいたらしい。頭を振って、揺らぎそうになる意識を取り戻す。
「今回はまたえらくバラエティに富んでくれるじゃないの……」
眩暈を堪えて、鏡を覗き込む。そんなことをしても、中に居るモノが見えるわけじゃないのを知っているのに、
「……あれ?」
目の色が……戻ってる? 元の碧の眸が、鏡の向こうから見返していた。一瞬、鏡の前で混乱する。何かのきっかけがあったとも思えない、……訳が判らない……。
頭をふるる、と振り、ピトックをトランサーに戻す。その時、一瞬、何かが指先に走った気がしたけれど……気のせい、かしら?
『お仕事、パルムの方に転がってそうですよー?』
「はいはい……行ってみるわよ、ありがとね」
『ふぁーい』
……つくづくやる気ないわね、この道化PM。溜息を噛み殺しながら支度を済ませると、部屋を後にする。
指先に残る妙な感覚は、暫く消える様子が、ないままだった。


??『褪せぬ記憶。』 end.



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2008.06.09(Mon) | 『その、記憶。』 | cm(0) |

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