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白銀 桜

Author:白銀 桜
万華鏡、うつくしいかたちをみるもの。
映るものを、言葉に変えて。

日常、PSO2/PSUでのRP、創作など。

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+吸血鬼創作者様へ20の御題+ 04.血
「……っ痛ぇ……」
「……お互い、様ですね」
「??ひでー顔」
「それも、お互い様です」
 思わず顔を見合わせて笑っていた。笑うと、口の端が痛む。指で乱暴に拭ってみると、指先にはべっとりと血がついていた。
 ……そして、思い出す。あの夜のことを。
 聖莉が帰ってこなかったあの夜。もぬけの殻になっている家の前で愕然としていたオレ。
 そこに、ぐったりした聖莉を抱き、まりあちゃんを抱えて帰ってきたブラド伯。ブラド伯はオレに何も言わずまりあちゃんを任せ、聖莉を抱いて黙って家へ入っていった。オレは何も言えず、ただまりあちゃんを抱えて呆然としていた。
 あまりにも、間抜けだった。



 それまでも、聖莉に家の事情を詳しく訊いたことはなかった。訊けなかったというのが正確かもしれない。聖莉の時々見せる顔は、ひどく脆くていつ壊れるか判らないほど繊細だった。??言えば、一笑に付されるなんてもんじゃない。そのおまけにたっぷりと毒を含んだ憎まれ口までくっついてきただろう。
 それさえなければ、聖莉は何てことない女だったかもしれない。でも、それがあったから、オレはここまで思いつめたんだと、自覚している。??やっぱり、間抜けだ。
 オレが気付くのが遅すぎたわけじゃないだろう。むしろ遅かったのはあの女の方だ。傍から見て苛立つほど……そう、苛立つほどあいつは鈍かった。周囲の感情だけじゃない。自分の感情にだ。やっと気が付いたと察した時、聖莉は手の届かない女になってしまっていた。??やってらんねぇ。
「っ痛ぇなぁ……手加減なしかよ」
「鏑木さんこそ。??もしもここで手抜きでもしようものなら、僕の胸に杭でも打ち込みそうな勢いだったじゃないですか」
「ったり前だろ!」
「??すみません」
 唐突な謝罪の台詞に、笑おうとしたオレの顔が引きつる。それと同時に切れていた唇も、痛みを再び訴えだした。
「……謝るなよ」
「……はい」
「あいつの気持ちまで動かせるほどあんたが器用じゃないのはよく判ってるよ」
「…………」
 あぁ。そうだ。だからこそ、この吸血鬼を名乗るとんでもない、でも最高に面白い奴を、オレは心底気に入っていた。だからこそ、拳で語るとかいう意味のない行動に出てしまった。……結果として、ぼろぼろになったお互いがここに転がってるわけだけれども。
「鏑木さんは、いい男ですねぇ」
「あんたに褒められたって嬉しくないって」
「それもそうですね」
「なぁ、ブラド伯。血って美味いのか?」
 そう、指先にこびりついた血を見ながら、何となく口にした瞬間、空気が凍りついた。

「……悪い。冗談になってねぇな」
 そう、鏑木さんが強張った笑顔で呟く。僕は知らぬうちに凍らせてしまった空気に気が付いて、慌てて首を振った。……殴られた頬が、ひどく痛んだ。
「いえ、すみません……唐突だったもので」
「あー、気にするなって」
「いえ??極上の美酒、というわけではないですよ」
 そう言うと、鏑木さんの顔が微かにこちらを窺っていた。僕はその視線に気付かないようにして続ける。
「血に対して飢えがないとは言いません。でも、なければないで僕は大丈夫なんですよ」
「また吸血鬼のイメージをぶち壊す……」
 鏑木さんが苦笑して、顔を顰める。僕も苦笑して、同じように顔を顰める。
「??なぁ、ブラド伯」
「何ですか?」
「あの夜……あの時、さ」
 鏑木さんが何かを言いかけて、そして……笑った。

 オレは訊こうとした言葉を飲み込んだ。知られたくないこともあるはずだ、と。無理矢理自分を抑えつけたっていう方が正解かもしれない。……でも、それでもいい。
「帰るかぁ」
「え、」
「聖莉に怒られるの、オレ嫌だしさ。帰ろうぜ」
 あの時、聖莉を抱くその手が闇の中でも判るほどに赤かったことが、今でも忘れられない。あれは……あの赤は、血の赤じゃなかったんだろうか……?
「鏑木さん」
「あー、何言われるかなぁ……これで殴られたら泣くぞ、オレ」
 不自然なのは承知している。けれど、今訊ねたところでオレに何か出来るだろうか。……答えは、考えたくはなかった。
「??帰りましょうか」
 ブラド伯がオレに手を差し出していた。オレはその手を借りて立ち上がる。そして、何事もなかったようにオレ達は歩き出した。

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2006.01.26(Thu) | 吸血鬼創作者様に20のお題 | cm(0) |

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