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白銀 桜

Author:白銀 桜
万華鏡、うつくしいかたちをみるもの。
映るものを、言葉に変えて。

日常、PSO2/PSUでのRP、創作など。

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ストーリーテラーに100の台詞…No.3「ちょっと待ってよ」
 ……炎のような緋色の髪は、ワタシの遥か先を跳ねるように歩いていた。あぁ、あの歩き方からすれば、あと数時間ともたずに補給をしなければならないだろう。それは非常に非効率的だと何度も伝えているものの“彼”は全く意に介さない。それどころか、その補給の時間を心待ちにしているとまで言い放った。……急ぐ旅だと言ったのは、一体誰だったんだろうか。
「待ってください」
 ワタシの声は“彼”には届いていないようだ。……それは判っているけれど、ワタシの手持ちの荷物の多さを“彼”はすっかり頭から消し飛ばしてしまっているらしい。諦めきれず、ワタシは再び“彼”の背中に声を飛ばす。
「待ってください、ラス」
 今度は聞こえているはずだ。??けれど“彼”は振り返らない。ワタシは立ち止まって一呼吸置く。そして“彼”に言った。
「ちょっと待ってよ」



 ようやく“彼”が振り向いた。炎を思わせる髪が揺れ、燃えるような真紅の眸がワタシを捉える。
「何だよ、ワズ?」
「……何度声をかけたら止まってくれるんですか」
「まーったく、聞こえなかったけど?」
 にやにやと。人を食ったような、といわれる笑みを浮かべ、“彼”・ラス=エラスドはワタシに言う。
「大体さー、急ぐ旅だって言ってるのにどうしてそんな大荷物でくるかなー? 俺、そんな重装備しろなんて言ってないぜぇ?」
「アナタはその剣1つでいいでしょうが、ワタシの得物はこれですから」
 腰の後ろ、斜め掛けにするようにして据えつけたショットガン。見る人が見れば、ひどく古い……それこそ、骨董品といわれてもおかしくないような代物だ。しかし、ワタシにとってはこの世に足を踏み出した時からの……そう、相棒。ラスはそれを思い出したのか、髪をくしゃくしゃとかき混ぜる。
「まぁ……そうだけどさ」
「それに」
 私が言うのを聞いて、ラスは訝しむような顔を見せる。ワタシは背中に負ったリュックをラスの手に落とす。ラスが思いがけない重量に思わずよろけた。
「な……何だこれ!?」
「何だと思いますか?」
「……弾薬、じゃあ……ない、よな?」
「違います」
 じっとラスを凝視しながら、ワタシは続けた。
「アナタの1週間分の着替えと非常食、それから非常事態が万が一発生した際の救急用具一式、さらに……」
「あ゛??????!! 判ったって! 悪かった! ワズ、怒るなよ!」
「怒ってなんていません。というより、むしろ喜怒哀楽はありません」
「…………」
 ラスの顔が、苦虫を噛み潰す、という形容にぴったりの顔になった。

 ワタシの個体名はCA-01928。前のマスターに与えられた名は、エイワズという。古い言葉で“防御”を意味する言葉なのだと、その人は笑った。
 その人はワタシをまるで、自分と同じ感情を持つ生物だと思っていたようだった。たとえ被弾しても、人工皮膚に包まれた鋼はその傷の疼きすらワタシに伝えることはないと、何度説明しただろうか。けれどその人は、ワタシが表面上の疵を負う度に泣きそうな顔でワタシに謝罪の言葉を繰り返した。
『すまない、お前を傷つけるような闘いをして……大丈夫か?』
 そして毎回笑って、芝居のかった口調でこう言った。
『行こうか、エイワズ……我が愛しの相棒よ』

 その人が……唯一ワタシがマスターだと認めた男が死んで、もう何年も過ぎた頃。見覚えのある眸をした少年がスクラップヤードの片隅に投げ出されていたワタシの前に立った。……いや、立っていた。ワタシはその少年の手によって、その人の死以来、閉ざしたままだった世界を再びこの目で視ることになったのだ。
「……ラス?」
 急に元気のなくなったラスに、私は顔を近づける。さっと走らせたセンサーでは、特に身体の異常はなさそうに見える。まさか、急に体調を崩してしまったのだろうか?
「ワズ!」
 急に顔を上げたラスに、ワタシは……そう、驚いた。
「敬語、使うのやめろ。それから、お前のマスターは俺だからな! だから俺が笑ったり怒ったりしたら、お前も……笑ってくれよ」
 ラスはそう言って、ワタシの今まで持っていた荷物を持って歩き出そうとする。背の割に細い身体がよろけながらもバランスを取り戻そうとする。気がつけば、ワタシの手はラスの手から荷物を取っていた。
「??ワズ」
「??持つから。アナタがこれ以上、補給に所持金を割いてしまったら、非常食にまで手をつける羽目になるわ」
 ……ひどく、ぎこちない口調になっているのは理解できた。けれど、ラスが言った言葉、それは……。
「人のこと大食らいみたいに言いやがって……もう待たねーからな!」
 笑うそのラスの顔は、記憶回路に刻まれたままのその人にとてもよく、似ていた。

<No.3 End>

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2006.01.25(Wed) | ストーリーテラーに100の台詞 | cm(0) |

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