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白銀 桜

Author:白銀 桜
万華鏡、うつくしいかたちをみるもの。
映るものを、言葉に変えて。

日常、PSO2/PSUでのRP、創作など。

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【PSO2/RP】Eat me?//Give me!
 今年もまた、この日がやってきた……なんて。大騒ぎしながらチョコレートと格闘している女の子たちを見ながら苦笑する。いつもと違うのが良い!と騒ぐ子達のためにまた簡単なレシピを用意してきたけれど、女の子たちのパワーは毎回すごいと感心してしまう。
 大騒ぎの内にオーブンや冷蔵庫へ収まったチョコレートの完成を待つ間、少し一息入れようと紅茶を淹れ始めた私のところに、また女の子たちがやってくる。去年も見たその笑顔に、小さく苦笑して言う。
「今年はもう作ってきたわよ?」
「えー?」
「見てないから信じられなーい」
「だーかーらー、」
「「「おねーちゃんも、作るよね?」」」
 その場にいた子達が、示し合わせたように声を揃えた。……待ってこれ、去年に引き続いての逃げられないパターン……?
「ちょ、ちょっと!」
「おにーちゃんだったらあんまり甘くないのだよねー? だったらー」
「去年のはやっぱり甘かったもんねー!」
「ってゆーかおねーちゃんが可愛かったし!」
 ……誰かこれが悪夢だって、言ってくれないかしら。



「ちょ……ちょっと待ってよ姉ちゃん!」
「今日は女の子が頑張る日なのです、イブキは向こうなのですよー」
「アスマ君、ごめん、ね……?」
 鼻先でドアが閉まって、ご丁寧に鍵までかけられた。訳が判らなくて、ドアの前で立ち尽くしていると、世界がいきなり反転した。……音と痛みが後からついてくる。にっこりと笑うミシュさんの顔をぼうっと見上げて、投げられたことに気が付いた。
「緩みすぎですよ、アスマ君?――最近ちゃんと見てあげていませんでしたが、どうやら今日は徹底的にやった方が良さそうですね?」
「げ……」
 顔が引きつったのが流石に判る。そのオレの襟元を掴んで立たせながら、ミシュさんは低い声で苦笑した。
「……春ちゃんも仲間に入れてあげてください、最近君がレナちゃんに構ってばっかりで、あれでも少し拗ねてるんですからね?」
「ぅ……」
「君のシスコンは言うまでもないですけど、春ちゃんもブラコンなんですから。それに、レナちゃんと女の子同士で話してみたかったらしいですよ?」
「……そう言えば、って言わねーか、姉ちゃんは……」
「そういうことです、――さて」
 ミシュさんの声のトーンが変わる。そこで、ドアの向こうの気配に気が付いた。多分、オレが投げられた音からずっとドアに張り付いていたんだろう。……ちぇ、織り込み済みじゃん。
「覚悟は、良いですね?」
「……いつまでもやられっぱなしってわけに、いかないよなー!」
 掴まれた腕を振りほどいて距離を取ると、ミシュさんの目の色が変わるのが判った。――やべェ、スイッチ入った……!
「じゃあ、あちらが落ち着くまで耐えてくださいね?」
「落ち着くまでって、」
 返しかけた瞬間、向こうの部屋から小さな悲鳴と何かを取り落とす音がした。気がそっちに持っていかれた隙を見逃してくれるほど、ミシュさんは優しくない。本日2度目の投げに、息が詰まる。くっそ、容赦ねぇ!!
「こういうことですよ?」
「……マジかよー……」
「気を散らしたら、何度でも投げますから、そのつもりで。――言ってる側から余所見とは良い度胸ですね」
「っ、は……今の酷くねぇ!?」
「何言ってるんですか、今更でしょう?」
 しれっと言って笑うミシュさんは、軽く挑発するように手招きまでしてくれている。息を整えながら立ち上がると、模擬戦用の得物を渡される。どこまで本気なんだよこの人……。
「僕も久々なので、手加減してくださいね?」
「……久々な人はこんなもん出してこねーよ!!」
「おや、そうですか?……避けないと痛いですよ?」
「知ってるよ良く!!」
 ……やべェ、これオレ不利だ。集中力が全然足りねぇ……!
 隣からは相変わらず、悲鳴だとか謎の金属音だとかが聞こえてくる。何を話してるかまでは聞き取れないけれど、どうも姉ちゃんがレナちゃん相手に料理教室を始めたのだけは確からしい。何かちょっと焦げてないかなこの匂い……。
「っ、痛ぇ!!」
「でしょうね」
 ……待ってその銃回し、ガンナーのじゃないっすよねミシュさん。オレの視線にくるくると器用に銃を回していたミシュさんはにっこり笑って答える。
「このくらいは嗜みですよ?」
「初耳だなー……!」
「ほら、現役アークス。1発くらいは僕に当ててくださいよ?」
「くっそ……!」
 ――やられっ放しで、約3時間。身体中、痣のないところがないんじゃないかってくらい一方的に撃たれまくった気がする。仰向けにひっくり返って荒い息を繰り返すオレにちょっと笑うと、大して汗もかかないままでミシュさんは部屋を出ていった。……あ、ヤバい、ちょっと悔しすぎて声にならねぇ……。
 汗が冷えていく。身体が冷えていくのと一緒に、ざわつくほどの苛立ちも少しずつ静まってくる。カッコ悪ぃ……目を閉じて、呼吸を深くする。目の上に腕を置いて、噛みそうになった唇を必死で普段通りに戻そうとする。
「……アスマ君?」
 顔を覗きこまれているのに気付いて、頭を上げようとして、――何でオレ膝枕されてるんだろう。心配そうなレナちゃんの目に会って、小さく笑う。強張るかと思った唇は、ちゃんと笑えていたらしい。少しほっとしたようなレナちゃんが、髪をくすぐるように撫でる。
「大丈夫、だった?」
「それはオレも聞きたいかなー?」
「う……」
 顔を赤くしたレナちゃんが、オレの胸の上に何かを置く。少し不器用に結ばれたリボンで、……ぼっこぼこになるまで待った甲斐があったのは、よく判った。
「あの、……お姉さんに、教えてもらって、作ったんだけ、ど……あんまり、上手に」
「食べさせてほしいな?」
「えっ……えっ!?」
 笑ってるオレの顔を見て、レナちゃんの頬が更に染まる。包みを解いて、口に運んでくれたクッキーは、ちょっとほろ苦いけど、すごく甘かった。
「……ね、レナちゃん?」
「なぁに?」
「お返し、何がいいか考えといてくれよ?」
「…………」
「すっげー美味いよ、これ。……やっべ、すっげぇ幸せ」
「……うん」
 ホントは、レナちゃんの笑顔が一番だけど。――流石に言うのは、恥ずかしかった。



「……すまん、大丈夫だったか?」
「えぇ、あたしは……あなたこそ大丈夫?」
 逃げ込んだ喫茶店で、顔を見合わせて苦笑した。看板娘さんがにこにこ笑いながら、――何か含んでる気もする、けど――紅茶とケーキを置いて、カウンターに戻っていく。
「しっかし……去年より行動力上がってると思わなかったな」
「ホントにね……」
 着けっぱなしになっていたフリルだらけのエプロンを外しながら苦笑する。
 どうやら、子ども達の間で企みがあったらしく。私はチョコを更に作った挙句にエプロンで着飾らされて、戻った彼を出迎える羽目になっていた。彼の方は彼の方で、私の姿を見るなり吹きだしたせいで、脛に数人のスライディングを受ける羽目になっていたけれど。
「に、しても……明日、どんな顔して行けばいいんだかなぁ」
「ホントね……」
 ラブラブなところを見せろ、とか……何処で覚えるのかしら、ホントに。耐えかねた彼が私を引っさらうようにここまで逃げてきた、っていうのが実際のところなのだけれど、明日ホントにどんな顔で行けばいいのかしら……。
「……あ」
「え?」
「チョコ、置いてきちまった」
「…………」
 思わず吹き出すと、ちょっと拗ねたように横を向いてしまう。その腕に手を置いて、目でベランダの方へ促した。
「……ん、どうかしたのか?」
 先に出た私が背中を向けているのに、不思議そうな声がかけられる。こっそり取り出したチョコを指先でつまんで、小さく笑う。
「……食べるぅ?」
 チョコを咥えて見上げると、薄闇の中でも判るほど、彼の頬は染まっていた。
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2018.02.14(Wed) | 『まだここにない物語』 | cm(0) |

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