PSO2にてまったり活動中。 RPだとかその他いろいろ雑文書きとか。
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白銀 桜

Author:白銀 桜
万華鏡、うつくしいかたちをみるもの。
映るものを、言葉に変えて。

日常、PSO2/PSUでのRP、創作など。

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『前略っ!
 おにーさん、お身体お変わりありませんでしょーか! 最近お店の方に泊まりっきりで部屋に戻ってこないので、すっかりおにーさんのお部屋を自室として寛いでいる玻璃ですよっ! 最近はおにーさんの彼女さんの誤爆も無くなって、気まずい思いもせずに済んでおります!
 ……しかし、とゆーことは、お店でキャッキャウフフなさってるわけでしょーか……これは密を告げる案件ですね!? ちょっと言っときますエリアルさんとかエリアルさんとかエリアルさんに!!
 あ、おねーさんのご飯も大変美味しいのですが、たまには帰ってきてくださらないとおねーさんのご負担が多大なものになってしまいますので! その辺はよろしくお願いいたしますね!
 玻璃は夏休みになりますので、少々おじいちゃまのところに帰ってきます! 帰省ですね! おにーさんのご協力のおかげで、学業も満足いく成績を取れましたし、アークス業も大分板についたですよ!
 そんなわけで、玻璃が居なくなって寂しくて泣いてしまう夜もあるかと思いますが、1カ月ちょっと涙で枕を濡らしつつ待っているといいと思うですよ! あと空調、大分おかしくなっていますから! 玻璃が戻るまでに直していただけると助かります!
 では行ってまいりまーs』
「ねーよ!!!!!」
 どこからツッコめばいいんだあの眼鏡チビ……!
 店の仕込み中に届いていた音声メッセージに思わずぐったりする。目を丸くして一緒に聞いていたレナちゃんが、くすくす笑い出した。
「元気、だね」
「だー、もう……ごめんな、レナちゃん。アイツの所為で結構迷惑かけたんじゃ」
「うう、ん。……アスマ君の部屋に居て、びっくりした、けど……アヴリルさんから、聞いたから」
 眼鏡チビこと玻璃・スズノオは、どうもオレの養母的な人でもある人に拾われてたらしい。部屋を半占拠される勢いでルームシェアをする羽目になったせいで、遊びに来たレナちゃんと鉢合わせたり、寝入り端にダイブ喰らって叩き起こされたりと、かなりな目に遭ってきた。おかげでオレは避難するように店のバックヤードに泊まりこむことになったんだけど、まぁこれはこれで、
「アスマ君、これ……」
「お、サンキュ。――やっぱレナちゃんが花活けてくれると可愛いや、良い感じ」
 ……レナちゃんがオレと一緒に銀猫の仕込みを手伝ってくれたりするメリットもあるわけで。それを知ってるっぽいママさんは、うっすら笑いながら見守る、生ぬるいプレイを楽しんでるらしい。
「そうい、えば」
「ん?」
「空調……おかしい、って?」
「あー……何か言ってたな。ちょっと今日帰ってみるか、オレで直せるなら直しちゃうし。ルル姐も困るだろうしさ」
「……え、っと、……あの」
「……来る?」
 もじもじと服の裾をくしゃくしゃにしていたレナちゃんが顔を上げる。少し染まった頬に柔らかく笑みが浮かんで、――あぁもう、可愛いなぁ。艶のある髪をそっと撫でて笑うと、頬の赤味がほんのりと増す。小さく頷いてくれたのに頷き返すと、オレは何としても今日はオッサン達を追い返して早仕舞いする決心を固めた。



 ……入った瞬間、感じたのは強烈な冷気だった。驚いて足を止めると、続いて入ってきたレナちゃんが肩を震わせた。
「こ、れ……って?」
「……空調じゃねーだろ、あの眼鏡チビ」
 レナちゃんと顔を見合わせて、確信する。適性の低いオレでも判る、これは――フォトンの異常だ。
 窓には霜が降りている。地球で言うところの夏に艦内が環境設定されている今、こんなことはあり得るわけがない。吐く息が、まるで凍土に居るように白い。ゆっくりと部屋を見回して、……一際凍りついている場所を見つけた。
「アスマ君……」
「……一緒、来てくれるか?」
「…………」
 怯えたように、でもしっかりと頷いてくれるレナちゃんの手を引いて、オレは自分の部屋と反対側のドアの前で立ち止まる。声をかけようと小さく吸い込んだ空気は、刺すように冷たかった。
「――ルル姐、居る?」
 何とか震えなかった声に、応える声はなかった。ただ、部屋の中で小さく何かが動く音がする。それに気付いたのか、レナちゃんがオレを見上げた。
「ルル姐? 入るよ?」
「……め、今……来ちゃ」
 届くか届かないかの声を確認する。凍りついて動きの悪いドアを蹴り開けて中に入ると、そこは。
「……何だよこれ」
「テレビ、で……見た、のと」
 ちょっと前に賑やかな、ちょっと可愛いカタコトのキャスターがレポートしてたのを思い出す。市街地に突然現れた巨大な溶けない氷柱、それが1夜にして消え去ったニュース。――運良くというか悪くというか、その場所を知っているオレらにとっては、『何かが起きた』ことを予想するのは簡単で。だけどその原因がここまで近いとは、正直思いたくなかった。
 部屋は、凍りついていた。――凍土の樹氷を切り取って撒き散らしたような、一面の白と銀が元々は赤ベースの部屋を塗り替えていた。そして、その部屋の主は。
「ルル、さん……」
「入っちゃ、駄目って……言ったじゃ、なぁい」
 自分の身体を抱くように、部屋の中心で座り込んでいた。華奢な身体中から吹雪のように、雪の結晶を生み続けていた。身体中を走る白いラインが、部屋を満たす濃密なフォトンが蠢く度に、息衝くように瞬く。薄く開いた唇の淡い赤のグロスと、やけに光るボルドーの目だけが、この部屋の唯一の色だった。
 思わず駆け寄ろうとするレナちゃんをオレが抱き止めるのと、ルル姐の腕が上がるのはほぼ同時だった。
「……良い判断ね、アスマ」
「アスマ君、どうして!?」
「……ルル姐、コントロールしてこれ、なんだろ?」
「え……?」
 ――フォトンコントロールを常に意識して日常的に使っていたこの人が、これだけの事態になっちまっている。その原因は多分間違いなく、例の氷柱の件だろう。で、そこでコイツを背負いこんできてるはずだ。多くを語らずに、斜に構えてるよーな人だけど、誰よりもお人好しなのを、オレはちょっと知っている。
「その身体のも……何だっけ、ヨーイチがやってるヤツ」
「……フォトンサーキット……?」
「そうそれ、――こんなんなってるの初めて見たけど、多分そーだよな?」
「……察しが良すぎるのも困りモノね、アスマ?」
 小さく唇が苦笑する。でも、眉根を寄せたままの顔は、やっぱり辛そうだった。
 レナちゃんが取り出しかけた端末を握りしめて、オレを見上げる。メディカルに連れてく……や、普通のトコで手に追えるレベル、超えてるよな。レナちゃんも同じことを思っているのか、困った顔のままだ。研究機関にまでは流石にオレも伝手がないし、レナちゃんにそんなこと持ちかけられるわけねーし……。
「ごめん、レナちゃん……1か所、連絡してほしいところ、あるのよぉ」
「え、あ……は、はい」
「……社兄ぃ?」
「ち、がうわよ」
 一瞬、ルル姐の頬に赤みがさして、すぐに冷気がそれを奪っていく。ルル姐が告げた1つの連絡先に、レナちゃんの表情が硬くなる。オレは自分の端末を出すと、ルル姐に言う。
「オレが連絡するよ、何かあっても対処できるしさ。――信用できんの?」
「判らないわ。――ただ、陽一がサーキットを埋め込まれたところでもあるし、あたしが知ってる唯一の専門ねぇ」
「それ……マジで大丈夫なん?」
「……他の、メディカル……だと、駄目?」
「あたしに触れられるならね?……このままじゃダメでしょぉ?」
 小さく笑うその人に背を向けて、オレは連絡を始める。レナちゃんはオレに寄り添ったまま、フォトンの暴走で近寄ることも出来なくなってしまったルル姐を泣きそうな顔で見つめていた。



 ――今までにないほど必死に、コントロールを試みる。身の内に収めきれない分は、結晶を模して周囲へ散らしていく。身体を走るフォトンのラインは、日によって量が変わっている、けれど。あの時のような変色を見ていないから、まだ、大丈夫。
 連絡を取ってから、数日。まだ、先方からの返事を待っている状態だけれど、多分受け入れはされるだろう。
「下手に弄られたくないけど……どのくらい念押したらいいのかしら、ね」
 小さくまとめた荷物を持って、部屋を出る。端末を出して、画面を確認する。届いていたのは、心を残してしまうであろう人からの返事だった。
「少し……顔見てから、行けるかしら」
 呟く声が震えているのに苦笑する。軽く首を横に振って、いつもの場所へ、足を向けた。

<to be continued...?>
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